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捉える目

2012.07.03

 7月に入り、今年もあっという間に前半が過ぎ、この時期の風物詩・梅雨も後半戦突入といったところでしょうか。梅雨の季節はじめじめと蒸し暑く嫌な季節ですね。私はこのようなときは、美術館などでゆったりとした時間を過ごすのが好きです。

 

 これは10年ほど前の話になるのですが、とある絵に出会い、その絵を通じて物事を細かく観察し、その本質を見極める、いうなれば『捉える目』を養うことの重要さを学んだことがあります。

 その絵を描いたのは、江戸時代後期に活躍した画家、伊藤若冲(いとう じゃくちゅう)という画家でした。皆さんは、伊藤若冲という方をご存じでしょうか?

 若冲は、日々技術を高めるために、俗世を捨ててまで絵に没頭し、技術向上のため努力した画家で、例えば葉の虫食いの痕まで見事に描かくなど、独自のユニークな描写や技法を駆使して繊細な絵を数々残しています。

 得意とする対象物は「鶏」で、表情や仕草を表現するために、毎日、何時間も飼っている鶏を“じっくりと観察し、性質を見極め”ていました。そして時には墨の濃淡のみで、時には鮮やかな色彩で、大作を数々描きあげています。

 若冲は対象物を表現するために、『捉える目』を養い、成功を収めた画家といえるでしょう。

 そのような若冲の絵のコレクターと知られ、その第一人者ともいわれる、アメリカ人のジョー・プライスという人物がいます。プライスは、友人に連れられて偶然訪れた画廊の壁に掛かっていた若冲の掛け軸に心を奪われてしまい、世界観が変わったといいます。プライスは、それを機に若冲のコレクションをはじめ、その後、自宅にわざわざ日本の大工を呼んでまで、これらを鑑賞する専用の和室を造らせたほどです。

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「紫陽花双鶏図・伊藤若冲画」

引用元:Wikipedia : http://ja.wikipedia.org/wiki/伊藤若冲

 

 『捉える目』を持つ若冲の絵は、アメリカ人のその後の人生を大きく変えるほどの衝撃のものなのです。

 私も実際に若冲の絵を観た際、絵をじっくり観察し、細かいところを観てみました。他の画家の絵とは違う、若冲独特の技法、表現法というのが、素人ながら私にも感じることができました。

 その時、美術館に行き、ただ“絵を観る”のではなく、細かいところまでじっくり観察することは、その絵の本質を知るひとつの方法であることを知りました。

 それからは、美術館に行くことへの楽しみに、広がりを感じるようになりました。

 

 しっかりと『捉える目』を持つことは、新たな世界を見る方法の一つではないでしょうか。そしてそれによって、時には価値観や世界観が変わることもあるかもしれません。

 

ライフサイエンス総合研究所

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